とびっきり、片思い。
もどかしい##中田Side##
最後の配達先に向かう途中で、公園のベンチに新垣が座っているのが道路から見えたから、自転車の速度を落とした。
一人で何をしているのだろうと気になって声をかけ、自転車を止めて新垣の元に行ったが、どことなく元気がない。
「んで、妖怪は、何黄昏てんだよ?」
「妖怪じゃないってば!もぉ」
よし、いつもの調子が出てきたな。
頬を膨らませている姿を見て、俺は安心した。
「へへん。で?」
「夕焼けが綺麗だなぁと思って」
新垣は、いつも遠くの空を見上げている印象があるが、そこにどんな気持ちを映しているのだろうか。
カナタを思っているのだろうか。
俺には聞く勇気が無かった。
空なんてあまり見上げねえけど、こうして見ると色んな色が散りばめらえてんだな。
綺麗だと感じるのは、新垣と一緒に見ているからかもしれない。
このまま、時が止まればいいと思った。
「確かに綺麗だな」
珍しく俺の口から素直な言葉が出た。
夕陽は気持ちを溢れさせる強い力を持つのかもしれない。
このまま、好きだと言ってしまいたい衝動に駆られそうになったが、関係が壊れるという恐怖心で、喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。