とびっきり、片思い。
代わりに新垣の中で定着しているであろう俺のキャラを出した。
「でも俺は、飯の方が良いな!」
このままここにいたら、自分の思いを止められなくなりそうだった。
配達時間までもう少し余裕はあったが、俺は立ち上がった。
「腹ペコ青虫なんで。さっさと配達終えて家に帰りますわ。んじゃっ」
「バイバイー」
後ろから、ずっと聞いていたいその声が聞こえてくる。
新垣、好きだ。
転校してきて、初めて笑顔を見たその時からずっと、好きだ。
2年の時に一度だけ席が隣同士だったことがあり、その時、消しゴムを忘れた俺にちぎってくれた。
『半分あげるよ』そう言って向けてくれた笑顔に俺は堕ちたんだ。
席替えと言う学校の規定を本気で睨みつけた。
けれど、3年も同じクラスになれたから、嬉しかった。
もう一度振り向いて気持ちを声にすれば、すぐに届くであろう距離にいるのに、受け取ってもらえず地面に落ちてしまう気がして、一歩を踏み出せねえ。
それでも俺は、何かを届けたくて。
何かないかと考えていると、エプロンのポケットにさっき配達先で貰った飴が2個入っていることを思い出した。