とびっきり、片思い。
私の気持ちはつゆ知らずの母は続ける。
「憧れは悪いことじゃないわ。私も昔、アイドルにそういう気持ちを抱いていたことがあるから分かる。でも、それが長く続いたら現実はどこへ行っちゃうの?いつかは卒業しなくちゃ」
「わかってるよ……っ。ごちそうさま」
勢い良く立ち上がって、食器を洗い場に持って行き、そのまま自分の部屋に戻った。
胸が痛い。憧れなんて、簡単に言わないでよ。
私だって、出来るなら彼を思うこの気持ちから、今すぐにでも卒業したい。そして早く楽になりたい。
“好き”は、言葉にしたらたった2文字の気持ちなのに、どうして人間をこんなに複雑にさせるんだろう。