JUNK LAND【→】

男は世間から自分の“死”を問われている事等知らない。

また、決して主観的ではない意見が自分の死を“反対”している事も知る由もなかった。

全ては蚊帳の外で行われている理論のぶつかり合いであり、論理の対峙であった。

勿論そこで“被害者の気持ち”は材料として用いられる。
その抵抗材料が“加害者の人権”である。

しかし“加害者の気持ち”が語られる事はまずない。

もし論議する者達が彼の本来の主張を聞いていたとしたら、饒舌さも少しは緩和されたかも知れない。

いや、もしかしたら途端に議論の無意味さに気付くかも知れない。

男は思っていた。

「もう死にたい……」と。


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