青く、高く、潔く



放課後――…。





母さんの反対を押しきって、歩いての…下校。


友人らが、俺のペースに合わせて…、けれど、そうとは思わせないように…賑やかに、おちゃらけながら…歩いてくれた。


「そういや、最近里谷…激モテなんだぜ?」


「へー、マジか。」


「ファンの子がいたり、コクられたり…。けど、片っ端から振ってるみたいだけどな。もったいねー。」


「……………。」



「つーか、好きな女いるっつってた。」


「………………。」



「年上の幼馴染みだとよー。」


「………!それって…」



「……けど、恋愛とかしてる暇ねーんじゃないの、実際。お前もそうだったじゃん?」


「……………。」


「あれ?違うん?………もしや…、お前のことだから言わないだけで、彼女いたとか?」



「………。あー……。ずっと、気になるヤツはいたけどね。」



「はあ?初耳!だれ、誰?」


「年上の幼馴染み。」



「…………。………えっと、……それって――…。」



「モトには、言うなよ?」





季節は……晩秋。



裸寒い風が……、俺の膝を、ますます固くさせて…吹き抜けていった。


松葉杖が、乾いた葉っぱを踏みつけて。そのたびに、くしゃっと音を立てる。




冬は……、


もうすぐ、そこまで来ていた。



本格的な、シーズンの…幕開けだ。







友人たちと別れて、残りの…数100メートル。

真っ直ぐの道のりを…一人、歩いていく。




俺は……、携帯を取り出して。


誰んちのかも分からない塀に寄りかかると……



通話ボタンをタップして、ソレを耳にあてた。






コールが……10回。


留守番電話に…切り替わる。





「……モト?………あのさー…、W杯、お前の滑り…見た。いいの見せて貰った代わりに、俺も1つ教えてやるよ。」



ライバルで…居続ける為に。
モト。
お前は……先を行ってて。



「………お前はさー、無駄に頭いいから、あれこれ考え過ぎて、本番、結局…逃げんだろ?W杯の時、なに考えてた?や…、考えたら、あんな風には跳べないよな。だから…、ドロップインしたら、あとは…身を任せていーんだよ。」


あの頃みたいに、無心で…無垢に。
可能性だけを…信じながら……

空を駆けるんだ。



「……後は…、運だ。運がついてれば、すべて上手くいく。練習で何回も跳んでるんだから…、体が覚えてるハズ。」


涼っていう、最強の味方が…教えてくれたんだ。



「……俺、どうやら冷凍人間になるらしーから、多分数年後には…解凍してソッチの世界にお邪魔するわ。」


コレ、半分は…嘘じゃねーよ?




「それまで…、一番高い所で待ってろよ。……じゃ……。」







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