青く、高く、潔く
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人は…産まれてすぐには、自分で立つことも、歩くことも出来ない、非常に未熟な生き物だと、有名な動物学者が説いた。…と、母さんが言っていた。
それは…、12月の…末。
手術した足を、機械の力で…何とか曲げようと、ベッドの上で、必死にリハビリに励んでいるときに…言われた言葉だ。
『でもねえ、人は様々な環境に対応できるようになるために、あえて、出来上がった存在ではない。与えられた環境があって…、人の助けがあって、そういった様々な経験を通して…、育っていく。つまりね、柔軟に適応することができる…「可塑性」を持っているってこと。』
この状態の俺を、生まれたての赤ん坊のような目で…見ているのか。
はたまた、激を飛ばしているのか。
それとも…、ただ、元気付けようとしているのか。
彼女の話は…理解しようにも、難し過ぎて。
それに、何て返事を返したのかは…覚えていない。
その頃には……
窓の外には、チラチラと…雪が降ってきて。
俺にとっては、最も長い、冬の訪れを…知らせていた。
同室の子は、少しずつ顔ぶれが…変わっていき。
それでも、共通の目的を持った俺らは…いつも、笑って、笑って…。少しでも…抱える苦しみから解放されるよう…、そうやって、過ごしていた。
「大成兄、クイズ出すよー?」
一方で。
病室でのあそびも――…、飽きが来ないよう、変化をつけて。
暇をもて余すことも…なかった。
小さくて、狭い…学級のような。
年齢を越えた…交流の場。
「えーと。『……最初は…4本足。そして、次が…2本足。人にもよるけど、その次が…3本足。さあ、これの正体は?』」
「……………。……今、答え言ったろ。」
「………へ?」
「答えは…、『人間』!」
「……せいかーい。答えは…、『人』。産まれてから…4本足でハイハイをして、それから…二本足で歩いて、年をとったら…杖をついて、3本足!」
案外…、大人が教えてくれる言葉よりも。
こういった、普段の…会話だとか、さりげない日常だとか、生活の中での…出来事の方が。
ふと……、気づかされることがある。
「……3本足、か……。」
母さんが言っていることの…そのまた、先の話。
人の成長と…、老い。
松葉づえをついて歩く、今の俺は…。
退化…したのか。それとも、これから…進化するのか。
その、どちらともとれてしまうのだから…変な話だ、って…思った。