青く、高く、潔く
太成の住む家は…、同じ市内の、静かな住宅地にある。


どうして知っているのか、と問われれば…、愚問。好きな人のことである。少ない情報の中でも…同じ地元。

多少の有名人とでもあれば…
それらは隠してても…公になってしまうものだ。

けれど、私は…今、彼が何をしてるかなんて…知らない。


一度、自転車を止めて…。

携帯を…取り出す。


それから…暫し…悩んで。

選んだ名前を…そっと、タップした。




モト、
アンタなら…知っているでしょう?



『もしもーし、珍しいな、リョウ。どーした?』


「うん。あのさ……、」

『まあ、リョウが俺に用があるとすれば…、ウン、大体の察しはつくけど。』


「………大成って…」

『ほら、来た~』

「まだ何も言ってない。」

『いーよ、今更。……何?』

「……今…、何してるのかなって。」

『さあ…?少なくても、板には乗ってねーな。連休だし、出掛けてるか…家に居るかじゃねーの。』

「……だよね。」

『あのさ、本人に聞けば…いいことじゃねーの?』

「……………。」

『俺に聞いたって、今合宿中でそっちに居ないし、アイツのこと何でも知ってる訳じゃないよ?また聞きしたって…、それが本当かどうかなんて、信じられるもん?』

「…………。」

『リョウ、今…どこにいんの。』

「……地元…。」

『なら、百聞はなんとかって…言うじゃん。会いに…行けば?』

「…………。」

『酷いよなー、リョウは。』

「え?」

『こっちはさー、今リョウが何してんのかって気になってたのに。』

「……何で?」

『理由は…、そっちが一番わかるんじゃない?好きな人がどうしてるのかって…気にならない筈ないもんな。』

「…………。はい?」

『あ、嘘、気づいてなかった?』

「………………。」

『まあ…、たいせーより凄いとこ見せつけて…告白しようかと思った時期もあったけど…。リョウはそんなんで…俺を好きにはならない。』

「そんな大切なこと、なんで電話で…」

『だろ?直接会っていうもんだよな。』

「じゃあ、何で今…?」

『会おうと思わなきゃ…、会えないから。それから、振られるってわかってて…顔見て言える自信もないから。』

「……………。」

『そんくらいの…ちっぽけなモンだから、気にしなくてーよ。言える時に言わないで、あのときこーすれば良かったとか…さ、思いたくないんだ。』

「…気にするよ。」

『気にする相手、取り違えちゃあダメだ。アイツは…、強い。きっと、ちゃんと目標をもって…今出来ることをしてるんだと思う。けど…それって、孤独だとも…思えるんだよ。ずっと気を張っていて…疲れる時ってあるだろう?ただでさえ人に弱み見せるタイプじゃないし……一人で、悶々と…。下手したら、悪循環。』

「……………。」

『今、出来ることで…アイツにしてやれることがあるとすれば…、それは、リョウ。リョウしか…できないことなんじゃないかな。』

「……………。」


『ゼロから始める者同士…、分かり合えることが、あるんじゃない?』







< 122 / 152 >

この作品をシェア

pagetop