青く、高く、潔く
私は…もしかしたら。大成が私を知る、それよりも…君のことを、知らないのかも…しれない。


「なんか、変なの。」

君はそう言って。
プッと…軽く吹き出すと。


「メディアに出てる人が…目の前にいる。」

私を指をさして…、
珍しく、はにかむようにして――…

笑ってる。




それは…かつて。

私が君に抱いていた気持ちと…おんなじ物で。


ならば――……、


君が…いつか、私に言う言葉もまた。

同じ言葉であったら。そうであったら、って……
期待してしまう。



どこかでずっと。

君は…手の届かない存在なのだと…思っていた。


ゲレンデの上でも、

携帯の…中でも。

どんなに…近くにいたとしても。



なのに…、だ。

君の照れた顔を…隠してしまうくらいに。

暗くなった…この街で。

その…片隅で。


今、この世界で…きっと…誰も知らずに。
たった…二人きり。

一番近くに、居ることが…出来るのは。



私だけ。

そう自惚れても…いいのかな…。





「ねえ、大成。手ェ…貸して?」

「……ん?」


君は…、キョトンとした顔をして……。


私の前に 、手を伸ばす。

「グーに握って。ほら…、モトとよくしてるでしょう?」

「……ああ。」

ようやく…理解したような君は、モトとする…それと全く同じようにして。

あの……儀式をしたけれど。

私たち二人の間に…なんの取り決めもなくて、スカっと空振りすること…2回。


「イマイチ…決まりきらないけど。これで私も…同士だね。向かう…目標も、今は…バラバラかもしれない。けど、解散なんて…してやんない。」

「……。『暴走族』?」

「うん。もう…ちびっこではないけどね。」

「それだけでいいの?」

「………?」

「もうひとつ。俺とリョウにしかわかんないサインがあった方が…面白くない?」

「………。…どんな?」

「例えば……」


大成の手が。

私の手を…掬い取る。


それから、ガラでもないだろうに…そっと、ほんの…一瞬だけ。

甲に……君のカサカサとした唇が…。
君からのサインが…。

降り注いだのだった。


「ちょっ……。大成…!アンタ…生意気!」

「うん。下剋上。」

「いつから私の立場が偉くなってんのよ…。」

「……最初から…、かな。」

「…………?!」

「先に好きになった地点で…もう、この立場はくずれない。でしょう?総長。」




イタズラに笑う…君が。

初めて……触れた君の唇が。


愛おしいと思った…15の春…。



振り返らないと…誓って。
前ばかり見て…歩こうって。


約束も…しないまま。

不確かだけど、そこにあった…あたたかい…感情を。




私は、そこに……置いたまま。

君に背を向けて…

歩いていった。


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