青く、高く、潔く

さて。

人の記憶は……、果たして一体、どこまで…残されるのだろう。



かつて…海外をも騒がせた…小さなサムライ。日本の…天才少年。
彼の存在は、時間の経過と共に…人々の記憶からも…次第に風化されて。

台頭してった俺が…それを塗り替えていくようにして、日々…報道されている。


皆…忘れたのか?
あの時の…、感動を――…。








17歳。高校2年生になった…シーズン。

公式戦の合間に…ゲストとして招待された、小さな大会。


会場は…俺らの故郷。

懐かしい…、思い出の…ゲレンデ。

その地に…俺は、やって来ていた。


それはまるで…凱旋試合のようで。
アマチュアの選手と、あまり名の知られていない…プロのライダーと。そのなかに…ポンっと放り込まれたら…そうもなるだろう。

俺の名前が刻まれた…横断幕に。

中には…顔写真つきの応援グッズを持つ人が…いたりして。

そんな…VIP待遇に…少々気後れしてしまう自分がいた。
元々は…、小心者。
地元だからこそ…、なんだかちょっと…恥ずかしいのだ。


まあ、それこそが…このゲレンデ所有者の狙いだったようだけど――…。

思えば、レールやボックスの設置も…積極的に行ってきた、この…スキー場。

まさか、ハーフパイプまで作ってしまうのだから…驚きものだ。

この競技は…ダイナミックさと同時に、裏では…結構繊細な部分もあったりする。

たったひとつの…氷の粒。
曲線の…角度。
抜かりがあれば、大事故に繋がってしまうことも…ある。

会場を下見した俺は、きれいに整備されたソレに……すっかりお見逸れしてしまった。

心配など…無用。

俺が育った…ゲレンデで。最高の…パフォーマンスができる予感に。

ワクワクと…胸を踊らせた。
















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