青く、高く、潔く
俺の出番は…、予選終了後に1回と。決勝戦が終わった…最後の最後。

それまで…観客を引っ張る、と、言わば体のいい客引きパンダだ。



本部テントが用意されて。
招き入れられた俺は…暫しそこで、観戦することになった。


「すげー…、結構参加者いるんだな。」

ジュニアの部…。

ヘルメットを装着したチビッ子ライダー達が…。

決死のトリックを…行う。

「……あっぶねー…。」

中には…、初の試合なのか。及び腰になっている子や、予定していたトリックを行わずに、着地だけに集中する子もいたりして。見ているこっちの方が…ハラハラした。

「だよなあ、ウン。」


たいせーのように。いきなりキッカーに挑むような強心臓の持ち主は…極めて稀だ。

彼らを見てると……。

昔の自分達の姿が重なって見えてきて。
俺はそっと…目を閉じて。

あの時の光景を…思い返す。


逆エッジがかかって、頭から…スッ転んだこと。

オーリィーの練習してて…足がガクガクになったこと。

初めてパイプに挑んだ時なんて。

低い位置から…ドロップインして。
そのまま、平らになってるボトムを…ただひたすら一直線に滑り降りたっけ。


「青かったなあ……。」

だけど…今の自分より。
よっぽど度胸のある…怖さ知らずの面も持っていた。


滑りきった少年達は…、点数が出るや否や、直ぐに本部へと駆け寄ってきて。

「どうやったら上手くなりますか?」

口を揃えるようにして…同じ質問をしてきた。

その度に…俺は。

「そうだなあ…、仲間と競争することかな。」って、答えた。


たいせーが居なければ…、上手くなりたいってこうも強くは…願わなかっただろうから…。




そして、競技は…シニアの部。

アマチュアの選手と、プロの選手とが…混在するグループで。
決勝で争うべく、予選が……スタートした。


こちらも…、新鮮だった。

勝負の世界、というよりは…
自らを試す、ショーのような……。

審査員でもない俺は、どんなルーティーンを持ってくるかが…予想つかない。

世界のトップ選手が繰り出す大技こそないものの…

それなりに…一定の高いレベルで、エアーが行われていたから…なお、興奮は…冷めることもない。

けれど……、うん。
技の難易度は…ともかくとして。

それをも越えるような…高さのある、ビッグエアーは。

やはり…見られることは、ない。

それについては…おれ自身も、そう批評させてるだろうけど…。

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