青く、高く、潔く
因みに…、彼の点数を聞くことは…出来なかった。

うっかりしていたが…、ここは…地元。

顔見知りもいたって…おかしくはないけれど。

それ以前に、ファンだ、って、地元の人に握手を求められるとは…余り思ってはいなかった。


俺の…一度目のルーティーンは。

当初予定していた、ダブルマックツイストは急遽省いて…。

ある程度、高さで魅せることができるトリックで。ひとまずは…無難にまとめた。

さすがに…見劣りしては。面子が保てないって…判断したのだ。




下に降りて来ると…

一度本部に立ち寄って、ある許可をとると…。誘導係員に囲まれながら、立ち見の観客に混ざって…観戦することにした。

どうせなら…、応援する側の、生の声を…聞きたかったから。





決勝戦…。

各組上位6名…計12人による戦いが…行われようとしていた。

独自のルールで、チャンスは…1回きりの、1発勝負。

ポイントの低い者から順に滑走する。


俺は…、持ち出した双眼鏡で。さっきの男の所在を…確かめていた。

あの滑りなら…、間違いなく決勝に…残って来るはずだから。


「……うーん…分からないなあ。」

おまけに…、周囲がガヤガヤしていて。
会場アナウンスがイマイチ聞き取りづらい…。


一人…滑る度に。
胸の動悸は…次第に高まって来た。


元来… 俺は。
競技者としてはもちろんのこと…、人の滑りを見ることも好きだったはずだ。

身近に…そんなパフォーマンスを見せてくれるヤツがいたってことは…幸せな話だ。


例の選手は…
いっこうに現れる様子もなく…。

とうとうまた、俺の出番を促す声を…掛けられた。

このままでは…、さっきのパターンで、リフト乗車中に彼の滑りを見ることになるのか…。

はたまた、出番さえ近ければ…
スタート地点から、背中を追って見ることに…なるのか。

とにもかくにも、楽しみは…とっておくほど、大きく膨らんでいくもんだ。














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