青く、高く、潔く
スタートと同時に……君は、ふわっと板を浮かせ。
これまでの緊張感を…一気に解き放つ。
次第に、離れて行く…後ろ姿。
「……なあ。いつまで追えば…、追い付くんだよ。」
青い、青い…空が。
君の上いっぱいに……広がっていた。
スムーズな…ドロップインと。
無駄のない…ライディング。
ブランクなんて……本当に、あるのか。
記憶にある、未だ…鮮明に残る、たいせーの滑り。
それと、まるで…同じ軌跡を…辿っていく。
スピードは、加速するばかりで…、リップにたどり着くその時もなお、とどまることを…知らない。
それは…、初めてキッカーへと挑んだ時の…。怖さを知らない、ライディング。
1ヒット目…。
持ってくる技は…決まってる。
バックサイド エアー
グラブは…、トゥウィーク(※1)。
小さな身体に。どれだけの…可能性を秘めているのか。
たったの…数秒。
けれどそれが、いつまで続くのかって…思うくらいに。
どこまでも…、高く。
誰よりも…長く。
時が………止まる。
ここにいる、全ての者を…魅了していく。
2ヒット目――
フロントサイド…トゥエルヴ(※2)
今度は、宙を切り裂くような…3回転半の、スピン。
誰もが……息を飲んで。
ただただ、祈るようにして……、その、ライディングを…見守る。
会場を網羅する、グルーヴィーな音楽と…一体となり、
3ヒット目。
大きく、大きく……リップを飛び出すと。
ダイナミックな…ダブルマックツイストを繰り出した。
その、動きとは…裏腹に。
音も立てぬような…繊細な、着地。
リップtoリップは、君の…真骨頂。
俺は…、スタート地点から身を乗り出す程に。
夢中に…なっていく。
次は一体…何が飛び出すのか――…?
4ヒット目。
フロントサイド ダブルコーク テン(※3)。
回転速度も…去ることながら、この、余裕……。
もしかして、もう1回転できるんじゃねーの、って……。
ついつい…夢を見る。
「………5ヒット目は…何を持ってくる?」
空の上は…、何にも縛られることは…、ない。
奪われるものも、ない。
自由に…
どこまでも。
行けるところまで…行けばいい。
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※1「トゥウィーク」…身体を反るのではなく、捻って、かかと側のエッジを掴むグラブトリック。
※2「フロントサイド トゥエルヴ」…フロントサイド1260゜のこと。男子のスピン技の最高峰の技のひとつ。
※3「フロントサイドダブルコーク テン」…フロントサイドダブルコークスクリュー1080゜のこと。横に3回転(1080゜)に、縦2回転を加えたスピン系トリック。