青く、高く、潔く
窓の外は、360°見渡せる…雄大な山々。
雪融けの湿ったグラウンドからは、それが一望できて。
私は、その光景に何度も…心躍らされていたけれど――…。
今は…
そうじゃない。
頂上には、消えることのない万年雪。
教室の窓から…見える度に。
胸が――…痛む。
彼等、友利大成と、里谷元成が…万年雪なら。
私は…彼等の熱にとけてしまう…粉雪。
呆気ない競技人生だったと―…
溜め息が出る。
「………涼…。」
「んー…?」
「涼の携帯、鳴ってるんじゃない?」
机の脇に掛けた鞄を指差して指摘するカンナは、ニンマリと笑った。
「菅野先輩じゃないのー?」
「…………。そうかも。」
カンナが言う、彼は、先日メルアドを交換した…、本校卒業の、サッカー部・元エース。
この、狭い田舎では…
私でさえ、ちょっとした有名人。
ネームバリューがついて歩くのか、さほどスキーに興味がない人でもあたかも知ったかぶりをして。
近づいて来ることも…少なくない。
「イケメンだし、将来有望だし、もう付き合っちゃえばー?」
カンナはいつもそうやって。自分のお気に入りの人を紹介してくれるけど…。今だかつて、付き合うとか、恋愛に発展するまでには…至らない。
心に残るしこりが。
万年雪が。
融けることは――
無かった。