青く、高く、潔く
何故かって?
それは……
未知の世界に、出会ってしまったからだ。
小学校2年。
シーズン初め。
久々に訪れたゲレンデに、見覚えのない奇妙な物が出現していた。
コースの中腹で、
一番先を滑っていた俺は…
雪煙を上げて、勢いよくストップした。
「なんだ……、あれ?」
続いて、大成も…
遅れて来たリョウも…
同じように止まって、それから、やはり同じように…
奇妙な物体へと、視線を移した。
「たいせー、アレ何?」
コースの端の方に…、鉄製の手すりのようなもの。
それからその先に…
長方形の、箱ような物体。
上面は平らで、長さがある。
大成は首を傾げて…
「じーちゃんとか、立ち上がる時に使うんじゃね?」
なんて…、妙な返答をした。
「あほかッ!自分で立てない人が板履いちゃダメだろ。それに、アッチの箱は?」
「んー……。幼稚園の子の滑り台?」
「なりほどー、おしりをつけてシューっと……。…って、バカあ~!これだけの為にリフトで上がるんかあー!」
俺は、分厚い手袋でスパーンっと大成のアタマを叩く。
流石にコレには、リョウも笑いを堪えきれず…
クスクスと小さく声をたてて笑った。
「それは…随分、優しいゲレンデだねえー。そのうち、平らになるんじゃない?」
「おおー!そしたら転ぶ心配もないわなー。……って、何でやねん!ここはクロカンコースかっ?リョウまで何を言うかな……。」
「ウソウソ、ジョーダン。あれは…、手すりっぽいのが『レール』。箱みたいなのが『ボックス』って言うの。」
俺らがまるで無知であることを象徴するように、リョウはハッキリと言い切った。
「………?レール?」
「今年から、新しく造られたらしいよ。」
「へえー…。…で、アレで何するの?」
すると……。
引率者として着いてきた、リョウの親父が「まあ、見てろよ。」って言いながら…
コースの上を指差した。
「…最近の若いのは、度胸があるから…お前ら、驚くぞ。」
そこには、
若いオトコの集団が…たむろして。
レールのスタート地点の少し上の斜面に座り込んでいた。
一枚の板を、足につけて。
「……!スノーボード?」
「そう。レールやボックス…、それから、キッカーって呼ばれるジャンプ台とか、アイテムを利用したトリックを…ジブトリックって言うんだ。」
「『トリック』…。…手品みたいなもの?」
「まあ、手品みたいにエキセントリックなもんに違いねーから…遠くはないな。ようするに、『技』のこと。」
「へえー……。」