青く、高く、潔く



息をすることが…、こんなにも苦しいだなんて…。




俺は…仰向けのまま、体勢ひとつ変えることを…しなかった。

シーツが擦れる音でさえ、出来れば…聞かせかたくない。


神経を削ってなお……息を潜めることだけに。


……必死だった。






ここの人達は…、いい人過ぎるから。


極力、迷惑が掛かることは…したくなかった。








けれど……、


身体はそれに抵抗するようにして。

拒絶反応を…示した。


何度目になるのか、嗚咽して……黄色い胃液だけを吐いた、その直後。






「よーやっと声出したなあ……。」



マスク姿のノアが。


カーテンを開けて…俺の枕元にやって来た。




「ナースコールしようか?」


「……いい。」


「あっそー。」



ノアの目が…、怒っている。


「ホラ、貸せよ。」



ヤツは、洗面器に入った袋を…俺から奪うと。


そのクチを、器用に結んだ。



「息殺して…、どうするんだよ。かえって心配すんじゃん?」



「……………。」


「ジタバタして貰った方が、ちゃんと…頑張れてンだってわかるんだから、変な気を遣ってくれんな?」



「………………。」



「都合悪いとダンマリかよ、ぶわーか!ガキめが。」


「バカ、は言い過ぎ。」


「……うるせー、言ったよなあ、俺。ここでは…自分じゃ何もできねーって。だから…、信用してんなら、頼ったってバチなんてあたんねーよ?むしろさあ、こっちからすりゃあ、こんな自分でもこーして役にたてることもあんだなあって思えるから…、頼れよ。大したことはしてやれないけど…、少なくても、自分の存在意義を感じることは…できるよ。ここに、居る意味が…解る。」



「………。ここに居る…イミ?」


「ん。例えばどうして自分ばっかり?って気持ちよりも、どうして自分が?って考える。結局俺は…、まだまだ楽しく生きていたい。大袈裟かもしんないけど、怪我して、寝たきりになったときなんて生きた心地しなかったもん。ソレを知れことが…ここに居る意味なんじゃあないかって。」


「…………。」


「そうでもしなきゃ…、やってらんねーよ?」



ノアはニヤリ、と笑って。

もうひとつ、付け加えた。



「…苦しい時に我慢してたら、治るもんも治んねーからな。これが、最善策。俺ん時は…秀子さんが話聞いてくれてくれたよ?だから…、大成。お前のはけ口だって、絶対必要なんだ。」




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