青く、高く、潔く
夏の夜が…訪れるのは。随分遅い時間で。
家に着くその頃に……ようやく、日が暮れ始めた。
茜色に染まった夕焼けが…
とても綺麗で。
赤オレンジの空を、いつまでも…見上げていた。
アノ、狭い病室で……
たいせーも、コレを見上げてるのだろうか…。
「いや…、ないな、それは。」
この色は、今はヤツにとっては…きっと、恐怖の色。
早く朝が訪れて…、アイツの好きな青空が。空一杯に…広がればいい。
「なに…が、『目標になったら』だよ…。」
俺がお前の…指針になれと?
たいせーのノートにびっちり書き込まれていたのは……
スノーボードの『ス』の字も出て来ない、文字の…羅列だった。
治療のこと。
足のこと。
治療の……苦しみ。
それらばっかり並べていて。
表表紙を捲った1ページ目。
そこに書かれた、ヤツの当面の『目標』は――…
『生きる』 。
たった、それだけ……。
けれど、どんな目標よりも、重たくて…
切実な、願い。
たいせーが、スノーボードの申し子だって言うのなら。
ヤツから…板を奪うようなことはしないでくれ、と……
本気で…空に願った。
俺は…、ずっと。
たいせーのライバルで…あり続けるから。