青く、高く、潔く
「みんながみんな…、勝てる勝負ではないんだ。みんな…確かに元気で、前向きで、生きたくて、生きたくて…努力だってしてる。それでも…………。」
大成は…そこまで言って。
言葉を……詰まらせた。
「……ひとつだけ…、空いてるベッドが合っただろ?アソコに、この前まで…、女の子がいたんだ。すげー元気で明るい子だった。冗談みたくしてさ、『ツノが生えて来た』って……呑気に笑ってたのに…。」
「………その子…、は?」
「退院したよ。全身に癌が転移してて…。『ツノ』も、頭に出来た腫瘍だった。もう、出来る治療がないから……、家に帰る他なかった。なのに……まだ、小さくて…、なんにもわかってないから、ただ、喜んでたんだ…。『家に帰れる』って。」
「……………。」
「……運なんて…、くそ食らえって思った。そんなんで人生左右されたくなんかない。でも、……でもさ、こんな状況にどう挑んだらいいのか…わかんないんだ。運に賭けるような戦いってしたこともない。それでも…願わずにはいられない。」
大成の…視線は。
前を向くことは…ない。
ただ、ひたすら…
じっと膝元を見て。
拳を…握り。
大粒の涙を……、次から次へと、溢すのだった。
「……生きたい…、まだ……自由に、空を翔びたい。」
「………大成………。」
「涼……、俺…、だから、涼には会いたくなかった。」
「…………。」
「嫌でも、思い出すんだよ…。何でも、自分の好きなようにできた頃を……。憧れ…だった。涼は…女の子癖に、男よりも、大人よりも…スキーが上手くて。バカにされたくなくて、必死で…頑張れた。涼に会わなかったら、スノーボードにも出会わなかった。もう……、それしかないってくらいに…スノーボードが好きだって…思い知らされる。」
「………………。」
「もう、あの時には…戻れない。」
「……………………。」
伝わる……。
苦しいくらいの葛藤が。
暗闇に…葬られてしまった、君の…胸の内が。
必死の…叫びが。