青く、高く、潔く
憧れだったと…、君は言う。
微塵も、そんな素振りなど…見せもしなかったのに。
ここにいるのは…、
ただの…、ちっぽけな少年だった。
「……大成…、大成……。バカだね、希望を捨てたら…、何が残るの?」
「……………。」
「私は、アンタがそんな弱いヤツだなんて…思ってないよ?」
「………涼……、けど、」
「知ってる?大成…。トランプのジョーカーって、宮廷の道化師みたいな存在だって。」
「……………?」
「キングやクイーン。位のある人達と、家臣。そこに…、身分なんて全く存在しないみたくして、唯一自由に出きる…道化師。トランプでは、全てに左右されない…特別な存在。いかようにも…できちゃうの。」
「……………。」
「私がさー、ジョーカーだったら、あんたを笑わせるし、力を分けることも出来る。アクの強い厄介モノだと思って貰って…構わないよ。ただ、バカに…しないで。バカにだけは…しないで。ジョーカーが運…、そのものなんだって思えばいいよ。だから……、縋るのもアリ。カッコ悪くたって…、私達まだ、子供だし。泣きたくなるときだって…あるよ。いくらでも、泣けばいい。」
私は………、大成を、これでもかって言うくらいに…ぎゅっと抱き締めた。
「誰も見てない。誰にも…言わない。ジョーカーとして、アンタの苦しみを…解放してあげるから。」
「………………。」
君は……震える手で。
私のブラウスを……ぎゅううっと握りしめていた。
「……涼は…?」
「え……?」
「涼だって、苦しいんだろ?」
「……………?」
「ジョーカーは、自由気ままな…道化師。そうだったら…、涼が好きなスキーを辞める理由は、どこにも…ない。」
「………!………私…は……。」
「まだ、どうにでも…なるんだろ?俺には出来ないことでも、涼なら……まだ。」
「………………。」
「辞めんなよ…、涼。苦しいなら、型に囚われることは…ないんだ。好きなら…、自由に、楽しいばかりで…いいんだ。」
「………………。」
「………よえーな、俺ら。」
「弱くない。ただ、今はちょっと…、疲れてるだけ…。」
涙が……止めどなく流れた。
弱くて、ちっぽけで…
バカみたいに泣いて。
お互いに…
何かにすがりつかないと…不安で。
ブラウスに沁みた…大成の涙が……、温かくて。
初めて聞いた…君の本音が。あまりにも…辛くて。
………もどかしかった。