ツンデレ彼氏をデレさせろ。




ーぐいっ!!!



廊下が交差するところで、
横から腕を引っ張られて
そのまま走らされ、
階段を昇らされた。



ーこんな状況、昔にもあった。



腕を引っ張った犯人。
ーというより、むしろ。
この、地獄の状況から救ってくれた
救世主は。



「李斗!!!」




私が彼の名前を叫んでも、
彼は走り続ける。



ーそして、階段を上まで昇りきると。



ーがんっ!!



掃除用具が入っていたロッカーを
強引に開け、
私を突っ込み、
李斗もその中に入り込んで
扉を閉めた。



「李斗!??ーんぐっ!」




「し!静かに!」



李斗の掌が、私の口を塞いだ。



「……………。」



「………………。」



二人とも、黙ったまま。
身体が蜜着して、
どちらかわからない鼓動が響く。



ー心地いい。



こんなゴリラ先生に見つかるか
見つからないか、危機的状況なのに。



不謹慎にも、
李斗と二人の鼓動しかしない、
こんな世界が幸せだと思った。



ーそんな時。



どんどんどん!!!



階段を掛け上がる音が聞こえてきた。



「ちっ!見失ったか…。」



ゴリラ先生は、それだけ呟くと
階段を降りて行った…。




< 32 / 207 >

この作品をシェア

pagetop