ヒット・パレード
翌日は、雨が降っていた。
森脇はいつものように前島のマンションへと赴き、ドアを開ける。
「晃ぁ~、まだメシ食ってねぇだろ?マックで買って来たからよ」
玄関から声を掛けるが、前島からの返事は無かった。
「おい、まだ寝てんのか?」
雨天で部屋の中は薄暗いが、電気は付いていない。森脇は返事の無いまま部屋に上がり、いつも前島が座っている場所を覗き込むが、そこに前島の姿は無かった。
やっぱり、まだ寝ているのだろうか?昨日久しぶりに酒を飲み過ぎたせいかもしれない。
そんな事を思いながら、森脇は隣の寝室の開き戸を開けた。
そしてその思いがけない光景に、立ちすくんだまま、背筋を凍り付かせた。
天井から吊り下げられた革製のベルト。
そのベルトに首を掛け、前島は自殺していた。
「嘘だろ………
なあ、冗談だろ晃………お前、死…………」
唇が震えて、上手く言葉が出てこない。目頭が熱く火照り、涙が止められなかった。
「バカヤロウ!!死ぬ事ねえじゃねえかよっ!
お前、昨日はあんなに笑ってたじゃねえかよっ!」
前島の頬に手を当てる。それはすっかり冷たくなって、生命の温もりを完全に失っていた。
宙に浮いた前島の足下には、彼が最後に書き遺したであろう遺書が置いてあった。
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ゴメン やっぱりダメだった
最後に勇司と飲めて嬉しかったよ
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1986年8月24日
トリケラトプスの天才ギタリスト、前島 晃は自らの人生に終止符を打った。
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