ヒット・パレード



その後一時間程が経過したところで、カウンターの陽子の前にあるアーリータイムズのボトルの残量はおよそ半分程までに減ってしまっていた。


そして、かなりのハイペースでそれを消費した陽子の状態はと言えば、店に来たばかりの頃の、背筋を伸ばした行儀の良い姿勢は今は跡形も無く、背中は丸くうずくまる様に、カウンターに肘を突いてかろうじて上半身を支えている。


それでもなお、自らボトルのキャップを開けて、手酌でバーボンをグラスに注ごうとする陽子に、マスターもさすがに見かねて言った。


「ヨーコさん、本当に大丈夫なのかい?明日、仕事じゃないの?」


「マスター、大丈夫です!明日はお休みですから!」



商売柄、酔っぱらいの相手には慣れているが、若い女性が一人で来て店で潰れられるのがマスターにとっては一番困る。いよいよとなれば、酒を取り上げなければならないと、マスターはその様子を注意深く窺っていた。


とりあえず、陽子が眠ってしまわないように、適度に話題を振ってみる。


「それで、これからどうするつもりなんだい?24時間ライブの方は?」


その質問に、陽子は頭を抱える仕草で情けない声を洩らした。


「んもおぉぉ~~っ!どうするもこうするも無いですよぉ!交渉決裂!ぜっったいムリ!」


目の前で、両腕で大きくバッテンを作って見せる陽子。


それを見たマスターは、少し残念そうな表情で呟いた。


「交渉決裂か………それは残念だな、僕はヨーコさんならあるいは奇跡を起こしてくれるかもしれないと、少し期待していたんだけど」



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