ヒット・パレード



「私を買いかぶりですよ。マスターは………」


そりゃ、ご期待に応えられず申し訳ございませんでしたね。とでも言いたそうに、陽子はそう言って、少し拗ねた素振りでまたロックグラスに口を付けた。


陽子だって、諦めたくは無かったし、これまでも自分なりに懸命に交渉には挑んで来たつもりだった。しかし、物事には努力だけではどうしようもない事柄があるという事を、今回の件では嫌というほど思い知らされた気がした。


「じゃあ、諦めるんだ」


「だって、仕方無いでしょ……」


この期におよんで、マスターがまだこの話に拘っている事が、陽子には不思議で仕方無かった。


大体にして、トリケラトプスの解散劇の真相を知ってしまった今の状況を鑑みれば、彼等の出演交渉にはどうしても越えられない大きな難題が二つ存在する。


マスターだって、その事は陽子以上に知っているはずなのに。


「確かに、簡単な問題では無いけどね………前島君の代役は」


そう、それがまずひとつ。


天才ギタリストと呼ばれた前島 晃の代役を務められる程の腕を持つギタリストを捜す事は、メディアの力を以てしても容易な事では無い。


「それも、ありますし………」


そして、もうひとつ。むしろ、この問題の方がとてつもなく難題であると陽子は思っていた。


この問題が解決しなければ、例え万が一トリケラトプスをライブステージに上がらせる事が出来たとしても、24時間ライブは大失敗に終わる事になるであろう。


陽子は、この事を指摘した。




「だってもう、森脇さん……ロック嫌いになっちゃったんでしょ?」



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