ヒット・パレード




「ふうん……ライブねぇ………」


本田の話を聞いた局長は、顎に手を当てそう呟いた。


一考の価値はある。そんな顔をしている。


その局長の様子を見て慌てたのは、他ならぬ三人のぼんくらプロデューサー達だ。


すぐに本田の足を引っ張ろうと策略を企てる。


「いやいや、局長!そんな本田の口車に乗せられてはいけませんよ!」


「音楽祭なら、他局でもやってますし、二番煎じの感は否めない!」


田中と松本がすぐに異論を唱えるが、本田はそれに冷静に対応する。


「確かに、音楽祭は他局でもやっていますが、それとはスケールが違います。24時間あればかなり幅広く多くのアーティストを招集する事が可能で、視聴者の多くのニーズに応える事が出来ます」


田中と松本が簡単に言いくるめられるのを見て、古谷は心の中で舌打ちをした。


こいつは手強い……山下と違って、さすがに生半可な異論ではすぐに対応されてしまう。もっと相手のアキレス腱を突かなければいけないと古谷は思った。



そして、先程の本田の説明を頭の中で振り返ってみる。本田の説明に何かつけ入る隙は無かっただろうか。


(確か、時代を彩る名曲がどうだとか言ってたな、アイツ………)


その時、古谷の頭にある突破口とも言える閃きが浮かんだ。


(そうだ!)


古谷は、その閃きを本田に対しぶつけてみた。


「誰だよ!」


「えっ?」


本田は、一瞬古谷の言った事の意味が分からずに、古谷の方へと顔を向けた。


「その、時代を彩るアーティストってのは、いったい誰の事だよ!それがお前の企画の最大の目玉になるんだろ?」


そして、古谷は局長の方へと顔を向け、続けた。


「だいたい、坂本 九も美空ひばりも石原裕次郎も、もうこの世にはいませんからね!時代を彩るような大物はステージには引っ張り出せませんよ!」


勝ち誇ったように両手を広げ、本田の企画には欠陥がある事をアピールする古谷。これで本田の企画は潰せると確信していた。


しかし………



古谷の追い込みに少しは怯むかと思いきや、本田の返した答えは意外であった。


「いますよ……とびっきり凄ぇのが!」


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