ヒット・パレード
清々しい朝の陽光が、明かり採りだけの為にある小さな窓からその部屋へと射し込む。
ゆっくりと目を覚ました陽子は、まだ朦朧とした意識の中、今の自分の状況に疑問符を投げ掛けた。
(あれ………ここはどこ?私、何でこんなところで眠ってたんだろう?)
見た事も無い部屋。どこかのマンションの一室だろうか?しかし、部屋の雰囲気からして、ホテルの部屋のような気もする。
少し、頭痛がする。そういえば、昨夜はレスポールでしこたま酒を飲んだのだった。
森脇が帰った後、マスターからあの話を聞いて………そして少しヤケになって飲み過ぎた。
そして、マスターにタクシーに乗せられたところまでは覚えているのだが………それから後の事は、陽子の記憶からはすっかり抜け落ちていた。
「えっ、何……私、家に帰ったんじゃ無かったの?」
そう呟きながら、陽子は掛けてあった毛布を剥いで上半身を起こした。
すると、その刹那。今の今まで、全く気付かなかった隣の男の存在が、視界に入った。
仰向けで、間抜けそうな大口を開けて何の警戒心も無しに眠っている森脇 勇司。
全裸であった。
「ぎゃあああああああ~~~~っ!!」
ほんの数十センチという至近距離で、森脇の股間のアレを目にした陽子は、これ以上無いほどの叫び声を上げ、森脇の肩の辺りを思い切り枕で殴りつけた。
「イテッ!」
それをきっかけに目を覚ました森脇に、陽子は遠慮なく罵声を浴びせる。
「なんでアンタがここにいるのよっ!このスケベ!ど変態!」
「はあっ?何言ってんだよお前はっ!お前が潰れて眠っちまったから、俺がここまで運んでやったんじゃねぇか!」
「えっ?…………」
なにしろ、昨夜のレスポールを出てからの記憶が全く無い陽子。
キョトンとした陽子の様子に、森脇は全てを察したように肩をすくめ、大きく溜め息を吐いた。
「ったく、勘弁してくれよ………」
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