ヒット・パレード



その後、三十分ほど三人で雑談をしているところに、森脇はやって来た。


「あっ!」


店のドアを開けて入って来た森脇を見るなり、陽子が彼を指差して驚いたような声を上げた。






「森脇さん、パンチやめたんですね」


「うるせぇな!んなの俺の勝手だろ!」


がっつりと掛かっていた森脇のパンチパーマが、緩いウェーブの髪型へと直されていた。長さこそ昔のようなロングヘアーでは無いが、その髪型のおかげでオヤジ臭さはずいぶん無くなり、十歳は若く見える。


「良く似合ってますよ、森脇さん♪」


「お前に褒められたって嬉しくねえよ」


出来る事なら、あまり触れて欲しくなかった事らしい。森脇は気恥ずかしさを誤魔化すようにそっぽを向きながら陽子の隣へと座った。


「あ、森脇さん紹介します。こちらがプロデューサーの本田です」


陽子に紹介され、本田が森脇に挨拶をしながら右手を差し出した。


「初めまして、森脇さん。私が今回のライブ運営の責任者を務めます、本田と申します」


「なるほど、するとアンタがこの初音陽子の上司って訳か………それじゃ、アンタも苦労が絶えないだろうな」


「判りますか、やっぱり?」


「ちょっと!どこに共感してるんですかっ、二人共!」


陽子を間に挟んだ形で、握手を交わす森脇と本田。今夜初めて顔を合わせた二人ではあったが、陽子をからかう息はぴったりと合っているようだ。



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