ヒット・パレード













「いつまでも、ウジウジしてんじゃねえよ」


「なに?」


森脇の口から発せられた言葉に、武藤は瞬間的に顔を強張らせ森脇を睨みつけた……やはり、こいつ……


しかし森脇の次の言葉で、武藤はそれが単なる自分の勘違いであった事に気付く。


「きっと、晃なら今の俺を見てそう言うだろうと思ってな。
この28年間、俺はずっとアイツの死に拘り続け、まるで時間が止まったように一歩も前に進めず同じところで立ち止まっていた。
そんな俺を見て、アイツはあの世で何て言うだろう?きっと、
「勇司、もういいかげんに乗り越えて、前に進めよ!」
……そう言うじゃねえかと今になって気付いたんだよ」


そう言って、優しく微笑む森脇の答えは、まさに武藤が望んでいた模範解答であった。


「バカヤロウ、気付くのがおせぇんだよ」


一瞬でも森脇を疑った自分の恥ずかしさを誤魔化すように、武藤はそう悪態をついて笑った。


「それで、お前の答えはどうなんだよ。ベース演ってくれるのか?」


「訊くまでも無いだろう。リーダーが決めた事には従うさ」


解散を承諾した時と同じ台詞を引用して、武藤はライブの参加に快く応じた。



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