ヒット・パレード



トリケラトプスの事をもっと知りたい………と、陽子は思った。


あるいは、本田がディスクを陽子に預けたのはそれが狙いだったのかもしれない。


トリケラトプスの曲は聴いた。そして、その曲がとても素晴らしい事も分かった。しかし、陽子はそのバンドの経歴も、メンバーの顔も名前も知らない。


一体、どんな人間がこの素晴らしい曲を作りそして演奏しているのか、陽子は今すぐにでもそれが知りたかった。


早速、部屋のパソコンを立ち上げる。そして、検索ワードの欄に《トリケラトプス》の文字を打ち込んで、その検索結果を待った。











トリケラトプス(Triceratops)検索結果

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【トリケラトプス】
中生代白亜紀後期マーストリヒト階の、現在の北米大陸に生息した植物食四足歩行の大型恐竜の一属

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「って、そっちじゃねーーよっ!」


と、本田に最初訊かれた時に《恐竜》と答えた自分の事は棚に上げ、陽子はパソコン画面に思いきり突っ込みを入れた。


改めて、検索ワードに《バンド》の文字を追加すると、今度はしっかりと陽子の知りたかったトリケラトプスの情報が、パソコン画面に表れる。


その紹介画面には、トリケラトプスのメンバー四人が並んだ写真、名前、アルバムのタイトル、ヒット曲のタイトル、そして簡単な経歴等が紹介されていた。


まず最初に陽子の目に写ったのは、メンバーの写真。


いかにもロックバンドらしい厚底のブーツに、年季の入ったジーンズや革のジャケットで身を固めた四人は、長身で痩せていて陽子の抱いていたイメージ通りの容貌をしていた。


その下に目を移すと、メンバーの名前が載っていた。

森脇 勇司(ボーカル)

前島 晃(ギター)

武藤 謙三(ベース)

森田 信人(ドラム)


写真の並び順から、長髪の男がボーカルの森脇、金髪の男がギターの前島、オールバックにサングラスがベースの武藤、顎髭で少しがっしり系がドラムの森田だと分かる。


そして、経歴。デビューは1983年、デビュー曲の《ダイナマイト・スマッシュ》がいきなりのホリコン第1位を獲得。そこから解散するまでのシングルは全て1位を獲っているという凄まじさである。


出したアルバムは三枚、これも全てがミリオンセラーを達成している。


陽子が聴いたCDも、そのうちの一枚だったのであろう。


正直、トリケラトプスがそこまでの実績を持っていたとは陽子には驚きだった。


そして、もうひとつ驚いた事がある。


「1986年解散?」


それだけの飛び抜けた人気がありながら、トリケラトプスの活動期間はわずか三年間だけしか無かった。


しかもその理由は、どのサイトを調べても謎とされていた。



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