ヒット・パレード
《水を得た魚》………そんな表現がぴたりとハマるような、トリケラトプスのライブステージ。
28年のブランクなど少しも感じさせない。むしろ、それほど長い間ロックを封印していた溜まりに溜まった鬱積を、全てこの武道館のステージに倍返しでぶつけているようにも見えた。
それほど、彼等のステージには勢いがあった。
「人間は、死んだらそれで終わりだと思っていたが、そうじゃないんだな」
姿かたちは違えど、喜矢尻はまさに前島 晃そのものであった。他人に話せば「なんて荒唐無稽な」と笑われるかもしれないが、今ステージでギターを弾いている喜矢尻には、間違い無くあの天才ギタリスト、前島 晃の魂が憑依している。
その非現実的な出来事が、一万人の観客の面前、そして全国生放送のテレビカメラの前でこんなにも堂々と起こっている事が、本田にはなんとも愉快に思えて仕方が無かった。
「ステージでギターを掻き鳴らす幽霊なんて、聞いた事も無い」
「ホントに、こんな幽霊ならいつでも大歓迎ですね」
そう言って、本田と陽子は互いに顔を見合わせて笑った。
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