ヒット・パレード





「出演交渉?なんだそりゃ?」



陽子の質問に、本田は怪訝な顔つきで逆に質問してきた。


「ええーーーーーーーっ!出演交渉まだしてないんですかあーーーっ!」


「ああ、出演交渉はまだしてない」


「だって昨日の口ぶりじゃあ、特番のスペシャルゲストはトリケラトプスで決定みたいな話だったじゃないですか!」


「そうだ、トリケラトプスのスペシャルゲストは決定だ。これは、局長の意向でもある」


本田の言葉に、陽子は唖然とした表情で彼を見た。


出演交渉もしていないのに、スペシャルゲストも無いもんだ。そんな事を平然と言い切る本田の頭の中を見てみたいと、陽子は思った。


しかも、それだけでは無かった。


「まぁ、当日まであと6ヶ月もあるんだ。陽子君、君なら出来るよ!」


「は?………」


気がつくと、本田の右手が陽子の左肩に乗っていた。


「今、何て言いました?」


「トリケラトプスの出演交渉、頑張ってくれたまえ!」


「ちょ……ちょっと、ちょっと、ちょっと待って下さーーーい!なんで私なんですかあーーーっ!」


慌てる陽子に対して、本田は正反対の冷静な表情で答える。


「俺は、とっても忙しい。スタジオは空けられないし、他の出演者との交渉もある」


「私だって忙しいですよ!」


「心配するな。お前の仕事は他の者にフォローさせる」


「それにしたって、どうして私なんですかあーーーっ!」


「トリケラトプス、サイコーなんだろ?」


本田が陽子にCDを聴かせた訳、それがようやく彼女にも理解出来た。


最初から、これが狙いだったのだ。


直属の上司の命令。しかも局長の意向………こうなると、陽子にはもう選択肢はひとつしか無い。


「わかりましたよ………やればいいんでしょ、やれば!」


「そうだ。素直でよろしい」


本田は、満足そうに頷くと、陽子に背を向け、出口へと歩いて行った。


その本田の背中に向かって、陽子は思いきり憎らしい顔を作ってアカンベーをする。


「あ、そうだ」


いきなり立ち止まった本田に、陽子は心臓が止まるかと思った。


そんな陽子に、本田は更にこう付け足した。


「解散後、彼等の足どりは全く不明だ。まずは彼等の消息をつきとめて欲しい」


本田の鬼のようなムチャぶりに、陽子は目眩をおこして倒れそうになった。


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