ヒット・パレード
2月20日………
テレビNETの開局記念日は、およそ半年後の8月24日である。
しかし、いくら生放送とは言え、この大掛かりな特番を成功させる為には、今から様々な準備に取り掛からなければならない。
スペシャルゲストのトリケラトプスの出演交渉は勿論の事、それ以外にも現在人気のアーティストを中心におよそ百組近くのアーティストへと、出演交渉のオファーを出さなければ24時間のライブを埋める事は出来ない。
その選出、そして交渉の責任者となっているのがプロデューサーの本田である。
本番まで半年あるといっても、これだけの数のアーティストのスケジュールを押さえるとなれば、あまり時間的な余裕は無かった。
言ってみれば、この時点から既にライブは始まっていると言っても過言では無い。
「そうです、8月24日です。
いや、新曲じゃなくて過去のヒット曲の方をお願いします!」
この日、本田は男性アイドルを多く抱えるジョニーズ事務所と出演交渉をしていた。
この事務所の所属アイドルの中から、本田は三組を選出し出演交渉を試みたのだが、先方の社長はその三組を出演させる代わりに、古株の三組のアイドルの出演を条件に付けて来た。
いわゆる《抱き合わせ》というやつである。
しかも、現在は全く売れていないその古株のアイドルに、新曲を歌わせろと要求してきたのだ。
本田は、心の中で舌打ちをする。
「分かりました。では、新曲と過去のヒット曲の両方歌ってもらうという形ではいかがでしょうか?」
そんな打開策を呈示し、本田はなんとか先方との出演交渉を取り纏めた。
「では、その方向で宜しくお願いします。失礼します」
低姿勢で受話器を置くと、本田は苛ついた様子で煙草に火を点け、ぼやいた。
「まったく、調子に乗りやがって………あいつらの新曲なんて、いったい誰が聴くんだよ!」
そんな事をすれば、途中でチャンネルを変える視聴者が出てこないとも限らない
その古株のアイドルには申し訳無いが、彼等の新曲はCMの時に歌ってもらう事になるだろう………本田は心の中でそう呟いていた。
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