ヒット・パレード



「どうも、お待たせしました。大俵さん」


本田が、岩本から聞いた控え室のドアを開けると、大俵はソファの真ん中にふんぞり返ったような格好で座っていた。


「ああ、どうも。お忙しいところ申し訳ありませんな、プロデューサーのえーーと………」


「本田です」


本田は、上着の内ポケットから自分の名刺を取り出して、それを大俵に渡した。


「ああ、そうそう本田さんでしたな。いや、歳をとると物忘れがひどくて………こりゃ失礼」


どうせ俺の名前なんて、端から覚えちゃいないだろうに………


本田は心の中でそう思ったが、そんな事は勿論口には出さない。


「それで、大俵さん。今日はどういったご用件で?」


「ああ、それなんだけどね……」


そう言いかけた後、大俵は咳払いをひとつしてから目の前に置かれた緑茶に手を伸ばす。


その様子は、まるで力士が立ち合いのタイミングを計る時のそれに似ている。さすがに音楽事務所の社長をしているだけの事はある。


「聞きましたよ、24時間公演の話」


少しの間を置いて、大俵は話を切り出して来た。


(やっぱりその話か………)


本田が抱いていた、嫌な予感は的中した。



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