ヒット・パレード




本田の剣幕に、相田局長は申し訳無さそうに事のいきさつを話し始めた。


「実は、局の方にスポンサーからの要望があってね………ほら、大俵氏がCMに出ている例の会社だよ。どうも、大俵氏がスポンサーの方へと根回しをしていたようでね」


あのタヌキじじい!そんな事をしてやがったのか!本田は、思わずそう叫びたくなるのを、ぐっと堪えた。


まんまと大俵にしてやられた。


本田といえども局の人間である。スポンサー経由での局長の命令とあっては、逆らう訳にはいかない。


「分かりました。では、大俵さんの件は出演の方向で話を進めておきます………」


『悪いね………本田君』


本田は、電話を切ると力無い足取りで大俵の待つ控え室の中へと入って行った。


「お待たせしました。こちらの手違いで大俵さんへのオファーが遅れてしまっていたようです………詳細が決まり次第、こちらから事務所の方へとご連絡致しますので………」


「そうですかぁ~いや、それならいいんですわ。いやぁ、御社の50周年盛り上がりそうですなぁ~」


大俵は、上機嫌にそう言い放った後ソファから立ち上がり、豪快に笑いながら控え室を後にした。


一人控え室に残った本田は、ポケットに丸めて突っ込んであった24時間ライブの出演予定アーティストのリストに、手書きで大俵の名前を付け足した。


それを見つめ、深い溜め息をひとつつく。


ジョニーズの古株アイドルの事といい、大俵といい、この業界には一筋縄ではいかない我が儘な連中が、なんと多い事だろうか………



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