ヒット・パレード
本田と陽子がロックBAR《レスポール》へと入店してから、一時間が経過していた。
「そろそろ、始めるか………」
マスターは、そう呟くとカウンター奥の機材を操作し、店内に流れていた音楽を止め、続いて薄暗い店内の照明を更にもう一段暗くした。
いったい何が始まるのだろう………そんな思いで陽子がマスターのその一連の動作を観察していると、恐らくその答えを知っているであろう本田が、思い出したように呟いた。
「そういえば、今夜は土曜日だったな………」
「これから何が始まるんですか、本田さん?」
陽子の質問に、本田は新しい煙草に火を点けながら答える。
「この店では、毎週土曜日は《ライブの日》なんだ。これから、あのステージでライブが始まる」
薄暗い照明の中、ある一面の壁だけが明るいスポットライトで照らされていた。よく見ると、それは壁ではなくステージの前に張られた幕である事に気付く。
陽子の後ろで踊っていたモヒカン頭の男達も、いつの間にか踊るのを止め空いている席に大人しく座っていた。
「へえーーー」
陽子は、興味深そうにそのステージを見つめていた。
「これは、ウチがオープン以来やっている事でね、これを楽しみに来てくれるお客さんも結構多いんだ」
マスターが、そんな説明をしてくれた。
やがて、観客の歓声が沸き上がる中、ステージの幕が上がった。
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