ヒット・パレード



ロックBAR《レスポール》での一件から、一夜明けた翌日。陽子は、いつも使っているバッグよりも大きなサイズのバッグを背負って、局へと出勤して来た。


それを自分のデスクの上に置くと、意気揚々とバッグのファスナーを開けてその中身を取り出す。


「どうした陽子、転職でもするのか?」


「なんでそうなるんですか!そんな訳無いでしょ!」


からかうような本田の台詞に、陽子が大袈裟に頬を膨らませて反論する。そんな陽子の右手には、今朝自分の家から持ち出して来た、黄色い表紙の《タウンページ》があった。


「ゆうべのマスターの証言を参考に、これに載っている建設会社に片っ端から電話をかけてみます!絶対に《森脇 勇司》を見つけてやるんだから!」


そう宣言し、陽子はデスクの上に置いたタウンページの黄色い表紙をバシン!と力強く掌で叩く。


「よっ!女捜査官~初音 陽子!」


そんな陽子に対し、周りにいたスタッフの誰かから冷やかしの声が飛ぶと、周辺からどっと笑いが巻き起こった。




午後5時………


「……そうですか………わかりました。お手数をおかけして申し訳ございません、どうもありがとうございました」


陽子は、電話の相手先に丁寧な感謝の意を告げると、受話器を置くなり天を仰いで大きな溜め息をひとつついた。


「ここもダメかぁ………」


そして、タウンページの建設業の欄に何本も引かれた赤い棒線を、またひとつ増やす。


朝からずっと、こんな調子で建設会社へと電話をかけ続けているが、有望な情報は何一つ得られなかった。



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