ヒット・パレード



「見つからないそうじゃない。トリケラトプス」


局長室に呼ばれた本田が、真っ先に浴びた台詞がそれだった。


「はい、申し訳ありません局長。スタッフの協力のもと必死に手がかりを追っているのですが、未だ居所が掴めない状況でして……」


「本田君らしくないね。出来ない約束を自分から言い出すなんて」


相田局長は、特番の会議で本田がトリケラトプスの名前を出した時、既に彼にはトリケラトプスをステージに出すまでの目安がついているものと思っていた。それなのに実際は、まだ彼等の居所すら掴めていない。そんな本田の見切り発車についての失望を込めた言葉だった。


「出来ないとは思っていません!必ず彼等をステージに立たせて見せます!」


「僕としても、是非ともそう願いたいものだが、なにせもう3ヶ月も経っているんだ。ここはひとつ、ライブ内容を変更する事も考えておいた方がいいんじゃないのかな?」


「内容の変更?」


本田は、訝しげに相田の言葉に疑問符を付けた。


「つい先日、この番組をライブのMCに芸人を絡ませて、音楽六割、バラエティ要素四割の総合エンターテイメント番組にしてはどうかと、バラエティ部門からの提案を貰ったところだ。トリケラトプスの穴埋めには、その位の抜本的な変更が必要かもしれない」


「冗談じゃない!」


相田が口にしたその番組内容は、本田が理想としている純粋なライブの内容とは大きくかけ離れていた。


もしそんな事になれば、本田が苦労して出演成立までこぎつけた何人かのストイックなアーティスト達から、キャンセルが続出するであろう事は目に見えている。



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