ヒット・パレード



暫く考えていると、ある妙案が山下の頭に浮かんだ。


(そうだ!)


思わず、椅子から勢いよく立ち上がる。周りの者達は、その山下を少し驚いた表情で一斉に見上げた。


「二時間ドラマを12本連続で放映するってのはどうかな?」


山下が出した案とは、それだった。


今までに、他部門より突きつけられたダメ出しに対応した山下なりの結論である。


「どうだ、これなら文句はあるまい」とでも言いたげな表情で、山下は周囲を見回した。


ところが、


「それはどうかな……」


そう疑問を投げ掛けたのは、またしても報道の古谷。


「どういう事だ、古谷。お前の言った問題点はクリア出来ているだろう」


「まあ、12本流せば二時間おきにドラマが始まる訳だから、途中から観てつまらないという問題点はクリア出来ているとしても……しかしね」


「しかし何だと言うんだ!」


「当日まであと六ヶ月しか無い。
二時間ドラマ12本も、果たして撮れるかね……」


古谷が指摘したのは、スケジュール的な問題だった。


「それぞれ独立した二時間ドラマを12本、脚本を書くだけでも相当な労力だと思うけどね」


「そんな事は、問題無い!今だって、毎週二時間ドラマ一本撮っているだろ」


山下の言っているのは、テレビNETで毎週水曜に放送している《水曜サスペンス》の事を指しているのだろう。


だから、六ヶ月で12本のドラマを撮る事など容易い事だと山下は主張するのだが、古谷はそんな山下の認識の甘さを鼻で笑った。



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