ヒット・パレード



「アンタ、まさか《水曜サスペンス》程度のドラマで片付けようと思っているんじゃないだろうな?
冗談じゃない!開局50周年のドラマをそんな平凡なモノで埋められる訳が無いだろ!」


古谷にぴしゃりと言われ、狼狽する山下の姿があった。どうやら古谷の言った事は図星であったらしい。


そして、そんな山下の様子を一瞥して、バラエティーの田中が呆れたように言う。


「そんな事だから、ウチのドラマはいまいち数字が獲れないんだよな。
他所じゃ《半沢》とかデカイ数字獲っているってのに、ウチのドラマが弱いのは、プロデューサーのそのセンスが原因なんじゃないですかね」



番組を作っている者に対し、そのセンスを否定される事ほどの侮辱は無い。山下はテーブルに掌を叩きつけて怒鳴った。


「何だと!田中、それは俺に向かって言ってるのかっ!」


「あ、そういう風に聞こえました?」


にやけた顔で答える田中。普段、芸人達と絡む事が多いせいか、その口調はどうにも軽い。


しかも、この局のドラマの視聴率が他局に比べて低いのは本当の事である。


「お前、俺にケンカ売ってんのかっ!」


今にも田中に向かって掴みかかっていきそうな勢いの山下を、スポーツの松本、そして古谷がすぐさま牽制する。


「まあ、まあ、今は会議の場なんですから反論があれば議論を闘わせましょうよ、山下さん」


「そうだ山下、お前がセンスに自信があるというなら、例えば特番のドラマ、お前ならどんなものを作る?」


思いがけない古谷からの問い掛けに、山下は言葉を詰まらせた。



.
< 6 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop