ヒット・パレード
「おやぁ?誰かと思ったら、珍しい客が来てんじゃねぇかよ」
ふいに背中越しに聴こえたその聞き覚えのある声に、森脇は顔を歪ませ舌打ちした。
「マジかよ、厭な野郎に出くわしたもんだな………」
「まったくだ。アイツらが居るって知ってたら、来る日をずらしたってのに」
森脇に賛同するように、隣の前島が眉根を寄せる。
後ろを振り返る事はせずに、無視を決め込む二人が気に入らないのか、背中から聴こえる声は更に音量を上げた。
「おいっ!シカトしてんじゃねぇぞ、森脇と前島!」
仕方無く、声のする方へと振り返り、改めて溜め息を吐く。やっぱりコイツらか………
バンド名《スコーピオン》………トリケラトプスと同時期にこのレスポールでライブをやっていたバンドであり、トリケラトプスに対して異様なまでのライバル心と敵対心を抱いている。
しかし、ライバル心を剥き出しにしているのはスコーピオンの方だけであり、トリケラトプスの方は全く相手にしていないというのが本当のところである。
そもそも両者の間には、音楽的センス、演奏技術、ライブパフォーマンス、その全てにおいて歴然たる差があり、トリケラトプスがスコーピオンをライバル視する要素は皆無に等しい。
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