ヒット・パレード



それでもなお、スコーピオンがトリケラトプスに対して異様なまでのライバル心を抱くのには理由があった。


実は、このスコーピオンのリーダーでありベーシストの戸塚 光司(とつか こうじ)はトリケラトプス結成時、ベーシストとしてトリケラトプスに所属していたのだ。


しかし、他の三人に対して戸塚はあまりにも演奏レベルが低く、しかも練習放棄や遅刻等のやる気の無い態度が目に余った。


その為、バンド結成後わずか1ヶ月で森脇が戸塚を追い出し、現在のメンバーである武藤をベーシストへと据えたという経緯がある。


その後、戸塚はトリケラトプスに対抗して独自にメンバーを募り、自らがリーダーとなるスコーピオンを立ち上げた訳だが、人気の方はさっぱり………


そして、一方のトリケラトプスは自分が抜けた新メンバーで、あれよあれよという間に日本ロック界のトップにまで上り詰めてしまったのだから、これは面白くないに決まっている。


これじゃ、平和に飲ませてもらえる雰囲気じゃ無いな………半ば諦め顔で溜め息を吐き、肩をすくめる森脇。


「なんだ、誰かと思ったら、スコーピオンの皆さんじゃないですか。お前ら、まだ懲りずにバンド続けてたのかよ?」


それに、戸塚が応戦。


「お前らこそ、よく三年ももってるよなぁ~!ひょっとしてクビにならねぇように、レコード会社の社長のケツの穴でも舐めてんじゃねぇのか?」


「ハン、俺達はお前らと違って実力があるから、そんな必要は無いんだよ!もっとも、お前らだったらケツの穴舐めてもメジャーデビューはムリだろうがね!」


「なんだと!この野郎!」


「なんだよ、図星過ぎて頭にきたか?」


顔面を真っ赤にして怒る戸塚に対し、両手を広げて挑発する森脇。人数的には戸塚の方が完全に有利だというのに、森脇は全く怯む事は無い。



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