ヒット・パレード
あの雨の夜、前島は森脇を庇ってその結果、ギターが弾けなくなってしまった。
森脇には、何よりそれが悔やまれて仕方がなかった。
こんな事になるのなら、いっそ自分が刺されていた方がどんなに気が楽だっただろう。もし、前島の腕が元に戻るのなら、代わりに自分の命をくれてやっても構わないとさえ思った。
「アイツがあそこまでのギタリストになるのに、いったいどれだけ血の滲むような苦労をしたと思ってやがんだよ………それを、俺のせいで………チクショウ………」
悔しさのあまり、森脇が目の前の白い壁を力任せに殴った。
「森脇、お前のせいじゃねぇだろ。あんまり自分を責めんなよ」
渋谷区にある森脇の自宅マンション。今日、この部屋にはメンバーの武藤と森田が来ていた。
トリケラトプスの今後の事を話し合う為に森脇がメンバー全員に声を掛けたのだが、結局、前島は部屋に来る事は無かった。
無造作に缶ビールが並べられた小さなガラスのテーブルを囲み、森脇、武藤、森田が座っていた。
「それで、これからどうするつもりでいるんだ?お前は」
武藤が森脇に向かって尋ねた。
森脇からマンションに呼び出された時から、トリケラトプスの今後について森脇なりの考えがあるのだろう………武藤はそう思っていた。
「言えよ。もう、決まってるんだろ?」
押し黙る森脇に、今度は森田が言った。
森脇は、何か思い詰めたような表情でずっと壁の一点を見つめていた。しかし、ようやく覚悟を決めたようにテーブルの缶ビールを手に取り、それを一口、二口と飲んでから真剣な眼差しを武藤と森田へと向けた。
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