ヒット・パレード





「トリケラトプスは解散する」





トリケラトプスのリーダーである森脇が、考えに考え抜いて導いた、これが最終的な結論であった。


暫くの沈黙が、その場の空気を支配した。


十秒、あるいは二十秒。三人共ただ黙って、自分の前にある缶ビールに口を付ける。


そのうち、重苦しい沈黙を破り、ようやく武藤が嘆息と共に言葉を発した。


「やっぱり、そうなるか………」


意外にも、武藤も森田も、表情は森脇が考えていたより穏やかなものであった。恐らく、電話で森脇から呼び出された時より、ある程度の覚悟は出来ていたのかもしれない。


そんな二人に対し、森脇は心から頭を下げた。


「すまない!他にも方法はあるかもしれないが、俺にはこの結論しか出せなかった!」


「いいさ、お前がリーダーだ。
お前がそうしたいと言うのなら、俺には異論は無い」


「きっと、お前はそう言うと思ってたさ」


そんな二人の反応に、森脇は心底救われたような気がした。


「ところで、前島にはその事話したのか?」


「いや、晃にはこの後俺が会いに行って話してこようと思う。アイツも呼んだけど来なかったからな」


出来る事なら、前島にも来て欲しかった。しかし、それもまた仕方が無い事だとも思った。ギターを弾けない今の前島がこの中に顔を交える事は、たとえメンバーにその気が無くとも、プライドの高い彼にとって惨めで屈辱的な感情を抱かせる怖れがある事は否めない。


武藤も森田も、その事を気遣い、暫くは前島に会うのを控える事にした。


「じゃあ、俺達はこれで帰るよ。
前島にはよろしく言っといてくれ」


「ああ、わざわざ呼び立てて悪かったな」


そんな言葉を交わし、武藤と森田は帰って行った。


日本ロック界の頂点に君臨した伝説のロックバンド──トリケラトプスは、デビュー三年のこの日、リーダー森脇の決断により栄光の歴史の幕を降ろした。



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