ヒット・パレード



「おう、色々不便してるんじゃねえかと思って諸々買って来たんだよ。
弁当とカップラーメンと冷凍食品と煙草と………」


「そうか、悪ぃな勇司。ところで、酒も買って来てくれたか?」


「ああ、ビール買って来た。まだ冷えてるぜ」


「ビールか………まぁ、いい。飲もうぜ」


テーブルの上を片付け、缶ビールを並べる。そして、各々が一本を手にしてプルタブを開けた。


「で……俺に何か話があるんだろ?」


子供の頃からの長い付き合いである。森脇が何かを伝える為にやって来たであろう事は、顔を見れば大体分かる。


「ったく、せっかちな奴だな………」


これじゃ、気持ちの準備もヘッタクレも無いものだと、森脇が嘆息を吐いて苦笑する。


「実はな、トリケラトプス……………解散する事になった」





「そうか…………」




森脇の告白に、前島は短くただそれだけ、答えた。


そして、持っていたビールの残りを一気に飲み干すと、今度は煙草を一本取り出しジッポで火を点けた。


「まぁ……もう俺には関係の無い話だ。ギターの弾けなくなった俺は、もうトリケラトプスのメンバーじゃ無い」


直に森脇の顔を見る事はせずに、どこかの壁の一点を見つめながら、前島は虚ろな表情のままそう呟く。


「悲しい事言うんじゃねぇよ、晃。俺達はそんな事、これっぽっちも思っちゃいねえぞ」


「分かってるさ。でもな勇司、思ってるとか思ってねぇとかじゃ無い。ギターが弾けなきゃ、メンバーである資格が無い、これは変えようの無い事実ってやつだろ?
何なら、その辺の弾ける奴を捕まえて続けたって構わないんだぜ」


敢えて冷たく突き放すように、前島は言った。


「やめてくれよ………」


森脇の震える右手に力が入り、持っていたビールの缶がグシャリと潰れた。


一番辛いのは前島本人の筈なのに、そんな強がりを言う彼の心情を推し量ると森脇は堪らなくいたたまれない気持ちになった。



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