ホルケウ~暗く甘い秘密~
森の冷気が二人を包み込む。

心臓の音すら聞こえそうな静寂を裂いたのは、二人でもオオカミでもなく、第三者だった。

一斉に響き渡る銃声と、次々に倒れるオオカミたち。

信弘たちとは別の猟友会のメンバーが、木々の奥にいた二人とオオカミを見つけたのだ。


「早く逃げろッ!!」


照準を定めようと構えるハンターの一人が怒鳴る。

まだオオカミは10匹近くいた。

追いつめられた1匹が、亮平に向かって大きく跳躍する。

避けざまに、背中の毛皮をわしづかみ、亮平はオオカミを地面に叩きつけた。

ドォッと響く肉を打つ音に怯んだオオカミたちに、すかさずハンターたちが狙いを定める。

亮平と里美がハンターたちのもとに駆け込むやいなや、銃弾の雨がオオカミたちを襲った。

しかしそれでも、仕留めることが出来たのは3匹だけだった。

猟友会の面々と、里美、亮平は、信じられない光景に唖然としていた。

走り去るオオカミたちの、異常なスピード。

そして力強さ。


「あいつら……一体時速何kmで走ってるんだ……」


戦いが終わり、冷静になってから、亮平はみるみる青ざめていった。

自分がどれだけ危険な獣と戦ったか、やっと実感が湧いてきたのだ。


「で、君たちはなにをしていたんだね?」


亮平を現実に戻したのは、そのグループのリーダーとおぼしき男性だった。

里美が投げかけてくる視線を受け止め、亮平は信弘に盛大に怒られるのを覚悟した。
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