ホルケウ~暗く甘い秘密~


毎年新学期が始まった日は、全校集会とホームルーム、そして白川高校の生徒たちによる町内一斉清掃が行われるのが、白川高校の伝統である。

学年内でいくつもの班に分かれ、町内のあちこちを掃除するこの行事は、例年なら町民受けが大変良いものだった。


「今年は例年にはない危険が伴います。まず清掃範囲の縮小化。森林公園のキャンプ場の清掃は、今年はありません。 また、ブルーバード動物病院付近の森林のごみ拾い班は、他の班よりも15分早く切り上げることになっています。どの班にも共通して言えることですが……」


そこで言葉を区切り、白川高校校長、宮迫大地はポケットからハンカチを取りだし、脂汗を拭った。


「えー、どの班にも共通して言えることですが、オオカミを見かけた場合は速やかに近くの建物に避難してください。班長には携帯電話の所持許可が出ていますので、すぐに警察に通報するよう。以上の点を留意した上で、くれぐれも無茶をしないよう」


校長の話が終わり、各クラスの担任が班編成と清掃区域を発表し始めた時、りこはあることを思い出した。


(あ、今日一斉清掃だって玲に言ってないや)


半人狼の、どこか影のある美貌の幼なじみの顔を思い浮かべると、脳内でりこの主観と推測による映像が流れ始めた。

呆れたような顔で、りこに説教する玲だ。


『りこさんってば、マジで危機感無さすぎ!人狼が人の姿になれるってこと忘れたの?学校サボれって言ったって性格上無理そうだし、仕方ない、今日1日俺が張りついているから』


そして学校をサボり、りこのボディーガードに精を出す玲……。


(言い忘れていてよかったかも……)


自身の勝手な脳内妄想により、そう結論づけたりこだが、山崎の班編成発表を聞いて意見がすぐに変わった。


「第2班、女子、上見、海間、春山、本田。男子、石田、上原、森下、渡辺。担当区域はブルーバード動物病院裏。引率は俺だ」


フラグ発生。
どうにかへし折れないか思案し、りこはさっくりと前言撤回した。


(玲にボディーガード頼めばよかった……)
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