ホルケウ~暗く甘い秘密~
「あれが噂の超能力……」
「どうなっているんだ」
「興味深い。彼こそ実験対象にしたい……」
周囲のどよめきを気にも止めず、ジェロニモはりこと里美に向き合った。
「次に彼が目を覚ました時には、彼は人間ではなくなっていることでしょう」
「スミス神父、間に合わなかったんですね」
俯くりこに、ジェロニモは頭を振った。
「春山さん、間に合わなかったのではない。人狼に噛まれた人間は助からないのだよ。人狼の牙から抽出されるアンパルは大変毒性が強い。噛まれた瞬間に毒素が体内に回る」
だからこそ、と彼は山崎を見つめながら言葉を紡ぐ。
「人狼は毒に強い。この世のほとんどの毒が効かない。故に、我々人類は武器をとり、罠を仕掛けて人狼と戦ってきた」
ジェロニモの声が遠く感じる。
耳の中で、思考の鐘がガンガンと鳴り響く。
“人狼は簡単には死なない”
あの少年の光彩は綺麗な金色だった。
玲のような金混じりの茶色ではない。
つまり、彼は(亜種か純血種かはわからないが)完全な人狼だった。
そんな彼がいきなり苦しみはじめたのは―――――――――――――
(あの子の様子がおかしくなったのって、私の血を舐めてからだ……)
これはジェロニモに報告するべきか。
言葉に詰まるりこだが、結局なにも言わなかった。否、言うタイミングを逃したのだ。
「さて、皆さんお揃いですね?」
ジェロニモは祭壇に立つなり、周囲をぐるりと見回した。
「春山さん、これは一体なんの集まりなの?」
警戒心もあらわに、里美が小声で囁く。
まだ人狼についてなにも教えていないことを思いだし、りこは何から話せば良いのか判断に詰まった。
そしてそのまま、ジェロニモの演説が始まってしまった。
「皆様、よくぞ集まってくださいました。各学界の先生方、道警の皆さま方、そして現町長である高橋さん。私どもの目的はただ一つ。この街に災厄をもたらす害獣、人狼の一族、ボロディン族の駆逐です」
「どうなっているんだ」
「興味深い。彼こそ実験対象にしたい……」
周囲のどよめきを気にも止めず、ジェロニモはりこと里美に向き合った。
「次に彼が目を覚ました時には、彼は人間ではなくなっていることでしょう」
「スミス神父、間に合わなかったんですね」
俯くりこに、ジェロニモは頭を振った。
「春山さん、間に合わなかったのではない。人狼に噛まれた人間は助からないのだよ。人狼の牙から抽出されるアンパルは大変毒性が強い。噛まれた瞬間に毒素が体内に回る」
だからこそ、と彼は山崎を見つめながら言葉を紡ぐ。
「人狼は毒に強い。この世のほとんどの毒が効かない。故に、我々人類は武器をとり、罠を仕掛けて人狼と戦ってきた」
ジェロニモの声が遠く感じる。
耳の中で、思考の鐘がガンガンと鳴り響く。
“人狼は簡単には死なない”
あの少年の光彩は綺麗な金色だった。
玲のような金混じりの茶色ではない。
つまり、彼は(亜種か純血種かはわからないが)完全な人狼だった。
そんな彼がいきなり苦しみはじめたのは―――――――――――――
(あの子の様子がおかしくなったのって、私の血を舐めてからだ……)
これはジェロニモに報告するべきか。
言葉に詰まるりこだが、結局なにも言わなかった。否、言うタイミングを逃したのだ。
「さて、皆さんお揃いですね?」
ジェロニモは祭壇に立つなり、周囲をぐるりと見回した。
「春山さん、これは一体なんの集まりなの?」
警戒心もあらわに、里美が小声で囁く。
まだ人狼についてなにも教えていないことを思いだし、りこは何から話せば良いのか判断に詰まった。
そしてそのまま、ジェロニモの演説が始まってしまった。
「皆様、よくぞ集まってくださいました。各学界の先生方、道警の皆さま方、そして現町長である高橋さん。私どもの目的はただ一つ。この街に災厄をもたらす害獣、人狼の一族、ボロディン族の駆逐です」