ホルケウ~暗く甘い秘密~
「人狼って一口に言っても、色々種族があってね。あなたのお父様を害したのは、凶暴と名高いボロディン族である可能性が高いわ」
助けてもらったお礼はこれくらいで良いだろうと、りこは里美を正面から見つめた。
父親の仇討ちのために必要最低限の情報は、たった今教えた。
ここから先、どうするかは里美次第だ。
「遅れましたが、ホルケウの最大の協力者を紹介しましょう」
ジェロニモが声を張り上げた瞬間、視線が一気に祭壇に集まる。
いつの間にか、彼の隣には、妖精のような可憐さと獅子のような威圧感を兼ね合わせた美しい少女がいた。
背中までまっすぐ伸びた燃え盛る炎のような赤毛に、溶けだした蜂蜜のような甘やかなゴールドの瞳のその美少女は、キビキビと一礼した。
「彼女はアリアナ・スミス。私の養女(むすめ)であり、人狼の一族の一つ、リリス族の長だ。
そしてホルケウの最大にして最強の協力者だ」
深く折った腰をあげる時、アリアナの艶やかな赤毛がステンドグラスの光を受け輝く。
玲とはまた違った種類の圧倒的な美貌に、りこは目を奪われた。
「はじめまして。アリアナ・スミスです。私の率いるリリス族は、自分の意志とは無関係に人狼にされた者が集まる部族です。そのほとんどが、ボロディン族に噛まれた者ばかりですので、ホルケウの発足は我々のような者にとっては希望の星です。微力ながら、リリス族はボロディン族の殲滅に力を尽くします」
たおやかな外見とは裏腹な、どっしりとしたアルトの声を響かせ、アリアナは一言。
「ですのでどうか、半人狼の者たちの呪いを解いてください。まだヒトに戻れる彼らに、どうか未来を」
それは切実な願いだった。
これ以上ないほど心のこもった祈りだった。
(玲……。頼るべき場所は、ここかもしれない)
――――9月2日、白川カトリック教会にて。
人狼研究機関ホルケウが発足された。
助けてもらったお礼はこれくらいで良いだろうと、りこは里美を正面から見つめた。
父親の仇討ちのために必要最低限の情報は、たった今教えた。
ここから先、どうするかは里美次第だ。
「遅れましたが、ホルケウの最大の協力者を紹介しましょう」
ジェロニモが声を張り上げた瞬間、視線が一気に祭壇に集まる。
いつの間にか、彼の隣には、妖精のような可憐さと獅子のような威圧感を兼ね合わせた美しい少女がいた。
背中までまっすぐ伸びた燃え盛る炎のような赤毛に、溶けだした蜂蜜のような甘やかなゴールドの瞳のその美少女は、キビキビと一礼した。
「彼女はアリアナ・スミス。私の養女(むすめ)であり、人狼の一族の一つ、リリス族の長だ。
そしてホルケウの最大にして最強の協力者だ」
深く折った腰をあげる時、アリアナの艶やかな赤毛がステンドグラスの光を受け輝く。
玲とはまた違った種類の圧倒的な美貌に、りこは目を奪われた。
「はじめまして。アリアナ・スミスです。私の率いるリリス族は、自分の意志とは無関係に人狼にされた者が集まる部族です。そのほとんどが、ボロディン族に噛まれた者ばかりですので、ホルケウの発足は我々のような者にとっては希望の星です。微力ながら、リリス族はボロディン族の殲滅に力を尽くします」
たおやかな外見とは裏腹な、どっしりとしたアルトの声を響かせ、アリアナは一言。
「ですのでどうか、半人狼の者たちの呪いを解いてください。まだヒトに戻れる彼らに、どうか未来を」
それは切実な願いだった。
これ以上ないほど心のこもった祈りだった。
(玲……。頼るべき場所は、ここかもしれない)
――――9月2日、白川カトリック教会にて。
人狼研究機関ホルケウが発足された。