ホルケウ~暗く甘い秘密~
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その日の夜、里美はいつどうやって帰宅したのか、まったく覚えていなかった。
気がつけば自分の部屋のベッドの上で、うずくまっていたのだ。
パステルブルーのカーテンの向こうには、建ち並ぶ家々が見える。
そこから漏れる光をぼんやりと眺めながら、里美は今日あった出来事を、出来る限り鮮明に思い出した。
(春山さんは、一体何者なの……?)
なぜか女子に毛嫌いされている、どちらかといえば地味な転校生。
彼女はなぜ、人狼という化け物の存在を知っていたのか。
「おい、入るぞ」
里美の返事を待たずに、亮平がズカズカと部屋に踏み込んできた。
その中途半端なデリカシーの無さに、うんざりした表情を隠しもせず、里美は盛大に舌打ちした。
「あのさァ、あたしが返事する前に入ってきてんじゃ声かけた意味ないじゃん。待つってことを覚えたら?って何回も言ったはずだよ、この鳥頭」
「ピーピーうるせえな。なにいっちょまえに色づいてやがんだチビが」
「は?最低限のマナーって認識ももてないの?我が兄ながら、かわいそうなおつむだね」
亮平は、普段ならよっぽどのことがない限り里美の部屋に入ってこない。
何の用があってここに来たのか、里美はなんとなく想像がついていた。
「まだなんの収穫もないわよ」
中途半端に開いた口を閉じ、ムスッとした表情で、亮平は「あっそ」と吐き捨てた。
「俺が渡米するまで1ヶ月を切った」
「知ってる」
「お前一人でどこまでやれるんだか」
「少なくともあんたよりは優秀だから、帰ってくる頃には仇討ちは終わってるよ」
知りたいことはそれだけだったようで、亮平はさっさと部屋を出ていった。
ホッと一息つき、里美はベッドの上で伸びをした。
(咄嗟に嘘ついちゃった……。でも、迂闊に話したら面倒くさいことになりそうだったし。それに)
ジェロニモ・スミスという名の、イタリア系アメリカ人の神父。
超能力としか思えない、彼の不思議な力を思い出す。
彼はもう1つ力を持っていると言った。
その牽制は、里美にも効いていたのだ。
その日の夜、里美はいつどうやって帰宅したのか、まったく覚えていなかった。
気がつけば自分の部屋のベッドの上で、うずくまっていたのだ。
パステルブルーのカーテンの向こうには、建ち並ぶ家々が見える。
そこから漏れる光をぼんやりと眺めながら、里美は今日あった出来事を、出来る限り鮮明に思い出した。
(春山さんは、一体何者なの……?)
なぜか女子に毛嫌いされている、どちらかといえば地味な転校生。
彼女はなぜ、人狼という化け物の存在を知っていたのか。
「おい、入るぞ」
里美の返事を待たずに、亮平がズカズカと部屋に踏み込んできた。
その中途半端なデリカシーの無さに、うんざりした表情を隠しもせず、里美は盛大に舌打ちした。
「あのさァ、あたしが返事する前に入ってきてんじゃ声かけた意味ないじゃん。待つってことを覚えたら?って何回も言ったはずだよ、この鳥頭」
「ピーピーうるせえな。なにいっちょまえに色づいてやがんだチビが」
「は?最低限のマナーって認識ももてないの?我が兄ながら、かわいそうなおつむだね」
亮平は、普段ならよっぽどのことがない限り里美の部屋に入ってこない。
何の用があってここに来たのか、里美はなんとなく想像がついていた。
「まだなんの収穫もないわよ」
中途半端に開いた口を閉じ、ムスッとした表情で、亮平は「あっそ」と吐き捨てた。
「俺が渡米するまで1ヶ月を切った」
「知ってる」
「お前一人でどこまでやれるんだか」
「少なくともあんたよりは優秀だから、帰ってくる頃には仇討ちは終わってるよ」
知りたいことはそれだけだったようで、亮平はさっさと部屋を出ていった。
ホッと一息つき、里美はベッドの上で伸びをした。
(咄嗟に嘘ついちゃった……。でも、迂闊に話したら面倒くさいことになりそうだったし。それに)
ジェロニモ・スミスという名の、イタリア系アメリカ人の神父。
超能力としか思えない、彼の不思議な力を思い出す。
彼はもう1つ力を持っていると言った。
その牽制は、里美にも効いていたのだ。