ホルケウ~暗く甘い秘密~
「考えてもみろよ。来月は学祭。再来月には修学旅行。でっかい行事が二つもあんのに、このままぼっちで過ごすなんて寂しくない?」
「ああ、そういえばそうだったね」
どこか上の空のりこ(その時りこは山崎がいない分の仕事は誰が穴埋めするのか考えていた)に、本格的に上原は声を荒げた。
「春山がそんな調子だから俺が放っておけないんだよ!」
「え、え?」
「女子から本格的ないじめにあうのだって、もはや時間の問題だぞ!?早く味方作って、安全圏に入ってくれよ」
切実な上原の声音にりこはただひたすら驚いていた。
ここまで面倒見の良い、世話焼きな人間はなかなかいない。
「上原くんって、よくいるタイプの近所のおばさんみたい」
「どういう意味だよ」
「世話好きだよね。異常なくらい」
失礼なことを言いながら、りこはクスクス笑いが止まらなかった。
「ありがとう。気にかけてくれて」
心から笑ったのは久しぶりだった。
一瞬驚いたように眉をつりあげ、そして上原も笑顔になった。
「どういたしまして」