ホルケウ~暗く甘い秘密~
高橋が何を言いたいのか察しがついていた信弘は、小さく頷いた。
「白川町がまだ村だった頃に起こったオオカミ出没事件について、私に色々と聞きたいんでしょう」
つい最近、亮平と里美に教えたことをそのまま教え、信弘は古い木箱を差し出した。
海間家の者以外に、その存在を明かしたことのない、ブローニング・オート5の銃弾。
対オオカミ用に作られたその薬莢を、信弘は高橋に預けることにしたのだ。
「これは、一体?」
訝しげな高橋の呟きに、信弘は掠れた声で答えた。
「その昔、オオカミを仕留めた銃弾です。ブローニング・オート5というライフルの弾を持ってきました」
赤が混じったような濁った黒色のその銃弾を、高橋はしげしげと眺めた。
「猟友会で一番気の置けない友人の弟が、特別に調合した猛毒が塗ってあります。普通の銃弾じゃ死ななかったオオカミが、これを使えば即死しました」
目を細め、信弘は言った。
「わしはこの弾を、孫の里美か亮平に譲るつもりでした。しかし町が、警察が協力してくれるというのなら、この弾を手放しても惜しくは思いません。何が塗られているのか、調べてみてください。どうかそれが、オオカミ討伐の役に立ちますように」
逡巡の末、高橋が言えたのはありきたりな一言だった。
「ご協力、感謝します」
そろそろ話を切り上げようか、考えたその時、高橋は聞き忘れていたことを思い出した。
「そういえば、海間さん」
「なんでしょう?」
「オオカミの死体が、次の日には青年の死体に変わっていたというお話ですが……」
「高橋さん、あなたは化け物の存在を信じますか?」
ドキッと来る発言が、高橋の心臓に刺さる。
思わず息を呑む高橋を尻目に、信弘は薄く笑った。
「その反応だと、心当たりがないわけでもなさそうだ」
(心当たりなら、思いっきりあるさ……)
白川カトリック教会に住む神父が持つ超能力に、人狼の存在。
人智を越えたものの存在に関しては、高橋はこの数週間でいやというほど目の当たりにしてきた。
「今回の事件のオオカミも、前回の事件のオオカミも、わしはただの獣とは思っちゃいません」
詳細は知らなくとも、この人はオオカミ達の正体を知っている。
高橋はそう確信した。
「人狼。わしは、その名が相応しい化け物が現れたのだと思っております」
「白川町がまだ村だった頃に起こったオオカミ出没事件について、私に色々と聞きたいんでしょう」
つい最近、亮平と里美に教えたことをそのまま教え、信弘は古い木箱を差し出した。
海間家の者以外に、その存在を明かしたことのない、ブローニング・オート5の銃弾。
対オオカミ用に作られたその薬莢を、信弘は高橋に預けることにしたのだ。
「これは、一体?」
訝しげな高橋の呟きに、信弘は掠れた声で答えた。
「その昔、オオカミを仕留めた銃弾です。ブローニング・オート5というライフルの弾を持ってきました」
赤が混じったような濁った黒色のその銃弾を、高橋はしげしげと眺めた。
「猟友会で一番気の置けない友人の弟が、特別に調合した猛毒が塗ってあります。普通の銃弾じゃ死ななかったオオカミが、これを使えば即死しました」
目を細め、信弘は言った。
「わしはこの弾を、孫の里美か亮平に譲るつもりでした。しかし町が、警察が協力してくれるというのなら、この弾を手放しても惜しくは思いません。何が塗られているのか、調べてみてください。どうかそれが、オオカミ討伐の役に立ちますように」
逡巡の末、高橋が言えたのはありきたりな一言だった。
「ご協力、感謝します」
そろそろ話を切り上げようか、考えたその時、高橋は聞き忘れていたことを思い出した。
「そういえば、海間さん」
「なんでしょう?」
「オオカミの死体が、次の日には青年の死体に変わっていたというお話ですが……」
「高橋さん、あなたは化け物の存在を信じますか?」
ドキッと来る発言が、高橋の心臓に刺さる。
思わず息を呑む高橋を尻目に、信弘は薄く笑った。
「その反応だと、心当たりがないわけでもなさそうだ」
(心当たりなら、思いっきりあるさ……)
白川カトリック教会に住む神父が持つ超能力に、人狼の存在。
人智を越えたものの存在に関しては、高橋はこの数週間でいやというほど目の当たりにしてきた。
「今回の事件のオオカミも、前回の事件のオオカミも、わしはただの獣とは思っちゃいません」
詳細は知らなくとも、この人はオオカミ達の正体を知っている。
高橋はそう確信した。
「人狼。わしは、その名が相応しい化け物が現れたのだと思っております」