ホルケウ~暗く甘い秘密~
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結局、図書館での和んだ空気に流され、間宮香織と上原のケンカを見てしまったにもかかわらず、りこはその日以来上原と行動を共にするようになった。

すると、クラスは違うが、少しずつ女友達と呼べる存在の者も出来てきたのだ。


「なんか最近楽しそうだね。りこさん」


春山家の食卓にて。
隣に座り、何気なくそう尋ねる玲に、りこははにかみながら答えた。


「やっぱり、友達がいる学校生活って楽しいなーって。上原くんのおかげだよ。ほんと。彼が私のためにあちこちに働きかけてくれたから……。感謝しないとね」


そのあとに、最近仲良くなりつつある数人の女子の名前を出すが、玲が聞いていたのは最初だけだった。

ジトーッとした湿度の高い視線を送る玲に気づき、りこは首をかしげた。


「なんか、微妙な反応ね」

「そりゃね。彼氏の前で他の男を褒めてるんだもん。冷めるわ」


やれやれといった風に首を振る玲に、りこはムッとした表情で答える。


「だーかーらー、私達は偽物の恋人でしょ!?私が誰を褒めようと私の勝手よ!」

「だめ。認めない。りこさんが褒める人間なんて俺だけで良いの」


悪戯っぽく笑いながら、玲はりこの髪に手を伸ばした。
軽く毛先を弄び、手繰り寄せてキスを落とせば、それだけでりこの顔は真っ赤になる。


「明日の夕方デートしよう」


どこまでもナチュラルに誘う玲に、深く考える間もなく、りこは頷いていた。

が、すぐさま用事をいれてあったことを思い出す。


「ごめん玲。明日は無理なの。上原くんと学祭の買い出しに行かなきゃ」


またそいつか、という顔をする玲を見ていると、まるで焼きもちを焼かれているようで、りこは顔がにやけそうなのを堪えていた。


(なんか、本当に付き合ってるみたい)


「早めに終わらせて、その後に俺の相手してくれるなら行っても良いよ」

「どこまで独占欲が強いのよ。明日は買い出しが終わり次第、学祭の準備が始まるから無理」

「じゃあ、今相手して」
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